音にもうひと味、スピーカーのマルチ・ウェイ化に挑戦 !!
フルレンジ一発のスピーカーは、音が明るくて高音から低音までの音の繋がりもとても自然です。
しかし、16cmを越すフルレンジになると多少の高音不足を感じるようになるのは事実です。
このページでは、そういった場合の高音不足を補うために、ツィーター(高音用スピーカー)を用いる方法を紹介します。
また、フルレンジは使わずにウーハー(低音用スピーカー)とツィーターを使った2Wayスピーカー、ミッドレンジ・スピーカー(中音用スピーカー) も用いた3Wayスピーカーまで紹介します。
注意しないといけないことは、フルレンジとウーハーは、直接アンプに繋いでも大丈夫ですが、 ツィーターとミッドレンジはそのまま繋ぐと壊れてしまうということです。
ツィーターとミッドレンジを接続するためには、コンデンサー「第1図」とコイル「第2図」を用いなければなりません。
◎始めにコンデンサーと、コイルについて説明します。
- コンデンサーの働き
コンデンサーは一言で言えば、高音しか通しません。
つまり、低い周波数(低音)は通さず、ある周波数になると通しはじめて、高い周波数(高音)になると、抵抗無く通します。
その特性を利用してツィイーターと直列に接続することにより、高音だけを鳴らすことが出来ます。「第3図」参照
その時どの周波数(クロスオーバー周波数)から鳴らすかを決めるのがコンデンサーの容量です。
何ヘルツから音を出そうと決めてから容量を計算します。計算式は、①式です。
- コイルの働き
コイルの場合、コンデンサーと逆で、高音を通しません。
つまり低い周波数(低音)は抵抗無く通すのですが、高い周波数(高音)は通しません。
その特性を利用してウーハーと直列に接続することにより、低音だけを鳴らすことが出来ます。「第3図」参照
その時どの周波数(クロスオーバー周波数)までを鳴らすかを決めるのがコイルの値(インダクタンス)です。
コンデンサーの場合と同じように、何ヘルツまで鳴らすかを決めてからインダクタンスを計算します。計算式は②式です。
C=159,000/fcR (μF)・・・① L=159R/fc (mH)・・・②
R:スピーカーのインピーダンス , fc:クロスオーバー周波数
コイル、コンデンサーなどを用いて高域カット、低域カットなどを行う回路をネットワーク回路といいます。
回路にはいろんな組み方がありますが主な組み方を「第4図」に表します。
①②式の計算結果をまとめたものが「第1表」です。
「第4図」の12dB/oct形ネットワーク(-3dBクロス)の計算式は、③④です。
L=225R/fc (mH)・・・・③ C=113000/fcR (μF)・・・④
6dB/OCT 形ネットワーク(3dbクロス)計算式 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
L=159R/fc (mH) | C=159000/fcR (μF) | |||||
クロスオーバー 周 波 数 |
コイルの値(mH) | コンデンサの値(μF) | ||||
スピーカーのインピーダンス | スピーカーのインピーダンス | |||||
4Ω | 8Ω | 16Ω | 4Ω | 8Ω | 16Ω | |
第1表
◎マルチウェイ・スピーカー
コンデンサとコイルの働きのところで述べたことを利用すれば、簡単にマルチウェイ・スピーカーを作ることが出来ます。
コンデンサとコイルの値を決めるときに①、②式でクロスオーバー周波数:fcを同じにして計算して作れば、その周波数より低い周波数をウーハー、 高い周波数をツィーターが鳴らす2wayスピーカーが出来るわけです。
- フルレンジ+ツィーターのスピーカー
フルレンジ・ユニットを使ったスピーカーは、聴いていても問題はないくらい自然な音で鳴ります。
しかし20cm以上のユニットになると明らかに高音が不足してきます。
この場合、そのスピーカーにツィーターを付け加えることにより高音まで自然になってくれるスピーカーになり、 曇りのないベールのはげたようなスキッとした音になります。
「第5図」のように接続するだけです。
この場合ツィーターは10000Hz~15000Hz位から鳴らす程度で良いと思います。
つまりこの時に使用するツィーターが 8Ω の場合には、コンデンサ:Co は「第1表」から、2.0~1.3μF程度のものを用いればいいわけです。
この方法を用いて現在聴いている既製品のスピーカーの高音に不満を感じた場合、そのスピーカーのターミナルにコンデンサとツィーターを直列に繋いだものを 「第6図」のように接続すれば、そのスピーカーもよみがえります。
- ウーハー+ツィーターの(2Way)スピーカー
ウーハーとツィーターで2Wayスピーカーを作る場合、各スピーカーの特性に注意しないといけません。
たとえば、ウーハーが 3000Hz 迄しか出ないように書かれている場合、当然それに組み合わせるツィーターは、 3000Hz より低い周波数から鳴らすことの出来るものでなければなりません。
たとえばそのウーハーに組み合わせるツィーターが 5000Hz からしか鳴らないものを使えば、3000Hz~5000Hz の音の出ないスピーカーになってしまいます。
例としてクロス・オーバー周波数が 3000Hz の 2wayスピーカーを作る場合、「第7図」のように結線して、コイル、コンデンサーの値を「第1表」から それぞれ 0,4mH,6.6μFとすればいいわけです。
その時の周波数特性は、「第8図」のようになります。赤がウーハー、青がツィーターの波形です。
- ウーハー+ミッドレンジ+ツィーター(3way)のスピーカー
ウーハー、ミッドレンジ、ツィーターをつかって3wayスピーカーを作る場合も 2way と同じように考えます。
ウーハーを aHz まで出して、ミッドレンジを aHz~bHz、ツィーターを bHz~と考えると「第9図」のような特性になります。
赤は、ウーハー 黒はミッドレンジ(スコーカー) 青はツィーターの波形です。
結線図は「第10図」のようになります。
◎音圧について
上に述べたように作ればいいわけですが、最後に一つ重要なことがあります。
それが音圧の問題です。
音圧とは、簡単に言えば、同じ入力の時の音の大きさと考えれば分かりやすいと思います。
ミッドレンジ、ツィーターとウーハーの音圧が同じくらいでないと自然な音にはなりません。
つまり、実際は「第5図」、「第7図」、「第10図」のように結線しても自然な音では鳴ってくれません。
自然な音でならすためには、ミッドレンジ、ツィーターにアッテネーター「第11図」(ボリューム)を付けて調整する必要があります。
アッテネーターはあくまでも入力を絞るためのものです、つまり音を小さくするためのもので 付けない状態よりも大きい音にすることは出来ません。
それを考えると、ウーハー又はフルレンジ・スピーカーよりもツィーター、ミッドレンジの音圧の方が高くなければなりません。
音圧の高いツィーター、ミッドレンジの音をアッテネーターを使って絞り込み、ウーハー又はフルレンジの音の大きさと同じくらいにするわけです。
それを考慮にいれてスピーカー・ユニットを選ぶ必要があります。
「第5図」、「第7図」、「第10図」は実際には赤い点線で囲んだ部分に「第12図」に表すようにアッテネーターを挿入しなければなりません。
◎2Wayスピーカーの応用編
ここで2Wayスピーカーの応用としてバーチカル・ツイン・スピーカー(仮想同軸)を紹介します。
このスピーカーはとても理にかなったスピーカーです。
上に紹介したマルチ・ウェイ・スピーカーの場合は、低音は、下の方から、高音は上の方から聞こえてきます。
つまり低音から高音まで鳴らすことのできる楽器などの場合に音が上から聞こえたり下から聞こえたりするわけです。
この不自然さをなくすために、考えられたスピーカーです。
「第13図」のようにツィーターの上下に同じウーハーを取り付けます。
そうすることによって、低音は、2台のウーハーの中心点から鳴っているように聞こえます。
2台のウーハーの中心にはツィーターが取り付けられているので、低音から高音までツィーターの場所から聞こえます。
すべての音が同じ所から聞こえるので、このスピーカーを左右に並べて聞くと、音が上下にふらつくことなく聞くことができます。
同図の■の部分に「第12図」のアッテネーターをつないで音圧の調整をします。
このスピーカーには他にも長所があります。
ウーハーを2台付けることによって、締まりのある低音の増強効果があります。 とても張りのある、音のふらつかない(定位が良い)スピーカーになるわけです。
最後に
フルレンジ・スピーカー、ウーハーは、適当なスピーカーBOXに入れなければなりません。
しかし、ツィーター及びミッドレンジ・スピーカーは基本的に BOX は、必要ありません。
スピーカー BOX の上にのせるだけでかまいません。もちろん既製品のスピーカーのように BOX に、ウーハーなどと並べて取り付けてもかまいません。
ツィーターなどを取り付けてのマルチ・ウェイ化の効果は絶大です。是非一度お試し下さい。